六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編12】小指を立てるなよ・・・

堀口は下皿に放り込んでいたLOUIS VUITTONの財布をケツポケットにしまい込むと、少し申し訳無さそうな顔で言った。

「そろそろ『コレ』のトコに行くんで……もう大丈夫ッスよね?」

私の視線の先には、右手の握りこぶしから唯一ピンッと伸びた堀口の小指があった。今時、彼女のことを小指で表現する男もなかなかいないぞ。

「え!?あ、マジで?」

いくらボーナスを揃えられるようになったとはいえ、スロット屋に足を踏み入れたのもまだ二度目。独り立ちするにはあまりにも早すぎるのではないだろうか。そんな私の不安が伝わるように、わざと眉間にシワを寄せて堀口に訴えた。

「でも、もう客いっぱいだし、席空いてないんじゃないの?」

私は左手の人差し指をクルっと回して、客の多さをアピールして食い下がった。

「今、隣の台が空いたってメールがきたんスよ!」

堀口はそう言いながら、携帯電話を軽く振った。私がレギュラーを消化して悦に入っていた最中に携帯を弄っていたのはそういうことだったのか。

「大丈夫ッス!上のフロアのクランコのシマにいまスから!何かあったら呼んでくれればいいッスよ!じゃ!」

堀口は人差し指を上に向けてそう言い残すと、下皿に残っていた二枚のコインを拾い上げ、颯爽と二階へと消えてしまった。

――ひとりって……マジかよ

突然訪れた新たな危機に狼狽する。堀口が去っていった階段の方をボーっと見ていたら、二台隣に座っていた白髪の老人と目が合ってしまう。ジロジロ見るなよ、といった感じで睨まれたような気がしたので、慌てて自分の台へと向き直った。

とりあえずレバーを叩き、平静を装って遊戯を再開する。

――不安だ

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  • 俺をひとりにするなよ……俺をひとりにするなよ……

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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