六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編13】股間が締め付けられる・・・

堀口という後ろ盾を失い、ひとり「プチマーメイド」の角台に座る。もし次ボーナスが入ったら、自力で揃えられるだろうか。さっきまでは隣に堀口がいたから「いざとなったら揃えてもらえる」という安心感があったが、今は違う。先程までは高揚感から高鳴っていた心臓が、今は不安で高鳴る。

だが、こうなってしまった以上やるしかない。ここからは貝殻が光っていないときも『金髪の人魚』と『つなぎ目』を目押しする練習をしておかねばなるまい。

堀口の手を煩わせないため、いや、それ以上に自分のスキルアップのために、1ゲーム1ゲームゆっくりと、目押しの練習を続け……

――!!!

音もなく光った貝殻が視界の片隅に飛び込んできて、あやうく心臓が止まりそうになる。

――ビックリしたぁ、マジかよ

前回のレギュラーからほんの数分、見上げたデータロボには「18」の文字が刻まれていた。当たったことは素直に嬉しいのだが、これて終わりではない。むしろ問題はここからだ。

まずは『金髪の人魚』を狙う。心を落ち着けるよう大きく息を吐き、ゆっくりとベットボタンを三回叩いた。

――あっ!

ボーナスを揃えるときは1枚がけでよかったことを思い出した。こんな時、2枚だけ返してもらうにはどうすればいいのか……とオロオロしていると、二台隣に座っていた白髪の老人が、私の台を覗きこんできた。その視線は、初心者の私に対して「早く揃えてみろよ」と無言のプレッシャーをかけているようだった。

余分に投入してしまった2枚のコインよりも老人の視線の方が遥かに痛い。これ以上オタオタしている様を見せるわけにはいかない。40円は海に落としたものだと諦め、私は素知らぬ顔でレバーを叩き、リールの中からキラリと光る人魚の金髪を探した。

――よし、コレだな。見えるぞ。キラッ……キラッ……ハイッ!

『BAR・タコ・サメ』

私の金髪人魚はどこへ行ってしまったのか。少しだけリールを覗きこんでみたが、人魚の気配すらしない。だが、まだ大丈夫だ。このまま『BAR』を揃えてしまえばいいのだから。そう思い直し、堀口に伝授された『つなぎ目』狙いを敢行する。

――ガクンガクンするところ……ココか。よし。ガクッ……ガクッ……ハイッ!

『貝殻・7・サメ』

恥辱、屈辱、焦燥。あらゆる感情が一気に押し寄せ、まるで高いところに登った時のように、股間のあたりがキューっと締め付けられる感じがした。

――堀口ぃ、助けて……

→NEXT【人魚編14】兄ちゃん!目押しもできんのか!

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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