六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編14】兄ちゃん!目押しもできんのか!

今度こそはとベットボタンを一度だけ叩き、金髪の人魚を慎重に狙う。

『タコ・BAR・タコ』

――大丈夫だ、中リールにBARを狙えばいい。

『タコ・人魚・サメ』

大丈夫じゃない。さっき揃えられたビッグとレギュラーは、ただのマグレだったんじゃないだろうか。そう思わざるを得ない二回連続の失敗だった。

――ダメだ、堀口を呼んでこよう

そう観念し、左手に握りしめていたコインを下皿に放り投げて席を立とうとしたその時、左肩に誰かの手が乗せられるような重みを感じた。

――おぉ!堀口……

「兄ちゃん!若いのに目押しもできんのか!」

低くしゃがれたその声は、堀口のものではなかった。そこには、浅黒い肌にパンチパーマ、大きく欠けた前歯をアピールするかのように笑う小太りの中年男が立っていた。

「おら、回してみぃ!」

「え?あ、はい」

男の勢いに押されて、私は促されるままにレバーを叩いた。すると男はグイッと身を乗り出し、頬と頬がくっつきそうになるくらい顔を近づけてきた。

――うっ

男の首筋から放たれた汗とタバコのニオイが混ざり合った加齢臭が鼻に届き、私は思わず身体をかわした。そんな私の動きなど気にもとめずに、その男はあっさりとに金髪の人魚を揃えてみせた。

「がんばりや!兄ちゃん!」

男は私の右肩を強く揉みしだきながらそう言うと、つっかけたサンダルを引きずりながら二階のフロアへと消えていった。

――何なんだ、あの人は?

謎の男との接近遭遇にかなり動揺したが、鳴り響くファンファーレを早く止めるためにも、慌ててビッグボーナスを消化した。

――今回はあの人のおかげでなんとかなったけど、早く自力で揃えられるようにならないと……

ビッグを引いた喜びよりも、自力でボーナスを揃えられないことへの焦りの方が遥かに大きく感じた。

だが、私に降りかかる歓喜と試練の時間はこれからが本番だった。

→NEXT【人魚編15】はぁ……美しい

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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