六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編16】虜

自力で揃えられたことに大きな手応えを得、意気揚々とビッグボーナスを消化していると、勢い良く払い出されたコインがバラバラと足元にこぼれ落ちてしまった。

「あぁ!っとっと……」

思わず声が出てしまった。周りの客達が何事かとこちらを見る。ボーナス図柄を揃えることで頭が一杯だったが、気がつけば下皿が満タンになってしまっていた。突然のことに狼狽してしまったが、それを周りの客達に悟られないように自然な動きで台の上にあった箱に手を伸ばした。

ひと掴み、ふた掴みとコインを箱に移していく。箱を使うことも当然初めての経験なので、一体どれくらい移すのが普通なのかがわからない。とりあえず全てのコインを箱に移し終え、ひっくり返さないよう慎重に立ち上がり、台の上へと置いた。

立ち上がった拍子に軽く周りの台を見てみると、箱にコインを入れているのは私だけだった。私のヒキがスゴイのか、この台が特別スゴイのかはわからないが、もはや恐れるものは何もない。ひたすらレバーを叩くのみだ。

三度目のビッグボーナスを速やかに消化し終えた私は、光を失ったピンクの貝殻を左手の親指で少しだけ撫でてみた。

――また、よろしくお願いします

脳裏に焼き付いた淡く光るピンクの貝殻を反芻すると、あの高揚感が生々しく蘇ってくる。早くまた光っているところが見たい。その一心でレバーを叩いた。

私はすっかりこのピンクの貝殻の虜になってしまった。

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  • コインが溢れ出すという快感コインが溢れ出すという快感

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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