六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編17】刑事コロンボ

三度のビッグボーナスを引き、少し得意になってきた私は、トイレに行くという名目で堀口の元へと行くことにした。

堀口と千夏さんは、二階のフロアの一角を占めるクランキーコンドルのシマに仲睦まじく並んで座っていた。先に千夏さんが私の存在に気が付き、軽く会釈をしてくれた。それに気がついた堀口も私を見つけ、笑顔で手を振ってきた。

「どうッスか?出てまスか?」

店内の喧騒にかき消されないように、堀口は私の耳に顔を近づけて言った。私は今にも緩みそうな頬の筋肉を左手で隠しながら、右手の指を二本立てた。

「あれからビッグ2回引いたよ」

「マジッスか!?スゲェ!!」

堀口は目を大きく見開いて驚いていた。隣の千夏さんは笑顔で音の出ない拍手を送ってくれた。

「もう自力でボーナスも揃えられるよ。バッチリ」

そう言って親指を立ててみせると、堀口と千夏さんも親指を立てて応えてくれた。千夏さんとはまだ会話らしい会話もしていないが、三人の中にある種の連帯感のようなものが生まれている気がした。

「じゃあ俺も頑張るから二人も頑張って!」

「ウイッス!」

そう言って堀口の肩をポンと叩いた。そのまま自席の人魚の元へと一歩踏み出したところで、刑事コロンボばりの反転で、もう一度堀口の方を向いた。

「そういえば、トイレってどこだっけ?俺、トイレに行きたくてウロウロしてたんだった」

「何言ってんスか!プチマーメイドの隣にあるじゃないッスか!」

「あれ?そう……だよね」

私は気恥ずかしさに首をすくめ、愛しの人魚の元へと急いだ。

→NEXT【人魚編18】「兄ちゃん!調子良さそうやな!!」

  • 千夏さん、なんだか可愛らしい人だ千夏さん、なんだか可愛らしい人だ

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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