六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編23】BARを狙えぇ!!

調子良くボーナスを引いていた時とは打って変わって、ひとつひとつの動作が遅くなる。視界の端にピンクの貝殻を常に置きながら、ゆっくりとレバーを叩き、ゆっくりとストップボタンを押す。

――あと40ゲーム……

もはや光っている貝殻をイメージすることすら難しくなってきた。

――あと30ゲーム……

人魚さん、今日は本当にありがとう。いい夢を見せてもらったよ。

――あと20……!!

見上げたデータロボには「631」と表示されていた。前回のビッグボーナスから1時間以上経っているだろうか。もう永遠に光らないと思っていた貝殻が、鮮やかな光を放っているではないか。

――嗚呼、よかった……

これまで貝殻が光るたびに感じていた「歓喜」とは違い、今、私の心を覆ったのは「安堵」だった。二台隣の白髪の老人が、私の台を覗きこんできたが、そんなことはもはや気にもならなかった。

美しく光った貝殻をまぶたに焼き付けてから、1枚だけコインを投入し、中段に金髪の人魚を狙う。

『人魚』――よし!
『人魚』――よしっ!!
『貝殻』――嘘でしょ……

右リールの金髪の人魚は、上段にピタリと張り付いたまま動かない。こんなことがあっていいのか。覗き込んでいた白髪の老人が、わざと私に分かるように「ヘッ」と嘲笑し、自らの台へと向き直った。受け入れたくはないが、現実を直視して『BAR』を狙う。

ガクンガクンと揺れるタイミングに合わせて、スルリと『BAR』が3つ並んだ。レギュラーボーナスの音楽に合わせて、100枚ちょっとのコインが吐き出される。ここに至るまでに削られたコインの補填には到底足りない枚数だ。

――堀口ぃ、もう様子見終わったよなぁ

→NEXT【人魚編24】耐えられない、ハマリ・・・

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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