六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編26】1000枚超えろッ!!

「超えるか?超えろ!もうちょい!よしキタ!」

液晶画面が1000を超えるあたりで、思わず声を出して盛り上がってしまった。隣の堀口は私のことを微笑ましく見ているようだった。ついに穴の中のコインが全て見えなくなり、「カラン」という乾いた音を残して最後の一枚が飲み込まれた。液晶画面の数字は「1123」

「で、黄色を押すんスよ!」

堀口が黄色のボタンを押すと、液晶画面の左側にある隙間から、レジのレシートのような白い紙がスーッと吐き出された。そこには今日の日付と『スロットデルタ』の文字と共に、「1123」と印字されていた。

「あとはこれをカウンターに持っていけばオッケーッスよ!」

「なるほどね」

「ちなみに今日いくら使ったんスか?」

「堀口もいたときに使った最初の2000円だけだよ。それ以降は使ってないね」

「おぉ!じゃあ結構な勝ちじゃないッスか!よかったッスね!」

「そうなるかな。いや、ありがとう。堀口のおかげだわ」

そう言って私は、普段はしたことのない握手を求めた。堀口も「オッ?」っといった感じでそれに応えてくれた。こんな楽しい時間を過ごせたのも堀口、君のおかげだ。

「俺らはもうちょっと打っていくんスけど、どうするんスか?」

「俺は先に帰るわ。いい加減、腹も減ったしね」

私は腹のあたりをさすりながら堀口に言った。

「そうッスね!じゃあまた『ライズ』で!」

「おう!千夏さんによろしく」

右手を上げる堀口を眺めながら、私は彼に対する認識を改めなければならないと感じた。堀口、君を『ダメ人間』にカテゴライズしていた私を許して欲しい。確かに君は女性にだらしないところがあるが、決して『ダメ人間』なんかではなかったよ。

そんなことを思いながら、私はレシートを握り締め、カウンターへと向かった。

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  • 初めてのレシートは「イイ兄さん」初めてのレシートは「イイ兄さん」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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