六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編03】駆け寄る、女性の影

←BACKパソコン版【入札編02】首都高の下にバスケットコート

←BACKスマホ版【入札編02】首都高の下にバスケットコート

歩道にはみ出すように置かれたその看板には「喫茶ローダンセ」と書かれていた。窓から店内を覗いてみると、こじんまりとした個人経営の店といった雰囲気だった。

そこから視線を横に移動すると、ビルの柱に「マツモトビル」と書かれたプレートがあることに気づいた。見上げると、築二十年以上は経過しているであろう雑居ビルがそびえ立っていた。

私はメモ帳をポケットにしまい、喫茶ローダンセの窓を鏡代わりにヘアスタイルを整えた。今日のためにお気に入りだった茶髪を黒髪に染め直したのだ。裕子からは似合わないからやめろと散々笑われた。私自身、似合っていないと思うが、すぐに慣れてしまうだろうとも思った。

時間を確認しようと携帯を開くと、メールを受信していたことに気づいた。

――がんばれよ!

たったそれだけだった。裕子らしいな、と思いながら携帯をバッグにしまい込んだ。

身なりを整えて大きく深呼吸をする。しかし、緊張からかうまく息が吸えない感覚があった。たかが面接くらいで何を緊張する必要があるというのか。もしダメだったらまたスロプーに戻ればいいだけだ。そう自分に言い聞かせて、喫茶店の横にあるエレベーターへと歩を進めた。

エレベーターに乗り込み、五階を押した。いよいよだ、と気を引き締めなおして前を向くと、閉まりかけたドアの向こうからこちらに駆け寄る人影が見えた。

「乗ります!」

透き通るような女性の声が、狭いエレベーターホールに響いた。私は慌てて『開』ボタンを連打した。

→NEXTパソコン版【入札編04】「株式会社ネットアイズ」

→NEXTスマホ版【入札編04】「株式会社ネットアイズ」

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

10月≫
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

戻る