六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編04】「株式会社ネットアイズ」

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その女性は髪を振り乱しながらエレベーターに乗り込んできた。かなりの距離を走ったのだろう。息も絶え絶えといった様子で顔を伏せ、肩で息をしている。

「何階ですか?」

私が訊くと、彼女はようやく顔を上げた。ボブカットの間から覗いたその顔は、ややタレた目が印象的な色白の美人だった。

「あ……そ……はい」

彼女は言葉にならない声を発し、親指と人差指で丸を作ってみせた。どうやら私と同じく五階に行くらしい。私は黙って『閉』ボタンを押し、頭上の階数表示に目をやった。

五階に行くということは、この女性は、私がこれから面接を受ける会社の人間である可能性が高い。ここで何か粗相があっては不味い。下手に話しかけて、あとで人事に告げ口されてはたまったものではない。私は直立不動でエレベーターが止まるのを待った。

五階に着くと、私は『開』ボタンを押して「どうぞ」と彼女を促した。
彼女は「ありがとうございます」と小さく会釈をしてエレベーターを降り、すぐさま目の前のドアを開けて中に入っていってしまった。

そのドアには「株式会社ネットアイズ」と書かれた小さな看板が掲げられていた。
ドアの脇には小さなテーブルがあり、その上には白い電話機が一台置かれている。

『ご用の方は1番を押してください』

そう書かれた紙がテーブルに貼り付けられていた。メモ帳の切れ端にサインペンで手書きされたと思しきその紙を見て、IT企業のわりにはずいぶんとアナログだなと思った。

私は大きく深呼吸をしてから受話器を持ち上げ、1番を押した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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