六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編101】もしや『もやしっ子』

←BACKパソコン版【入札編100】ただならぬ空気
←BACKスマホ版【入札編100】ただならぬ空気

「そうか……うん。とりあえず俺、今から本社と会議があるからさ。それが終わったら電話してもいいか?携帯の番号変わってないよな?」

本田は額に手をあて、頭を抱えるような格好で電話口の向こうにいる人物――快人に問いかけた。その口ぶりは、やはり普通の『病欠の連絡』ではない雰囲気だった。

「それじゃあ、またあとで。じゃあ、お大事にな」

しばらくすると、本田は見舞いの言葉を残して静かに受話器を置いた。
仕事にとりかかる準備をしているフリをしていた私の耳に、本田の大きなため息が聞こえてきた。

誰もが電話の内容を知りたがっているはずだが、誰も口を開けない。そんな重苦しい状況を打破したのは、意外にも山倉だった。

「快人のヤツ、今日も休みッスか?」

根っからの無神経なのか、それとも空気が読めないだけなのか。山倉は吐き捨てるように本田に尋ねた。

「……うーん、とりあえず今日も休みだ」

本田は低い唸り声をあげてから、それに応えた。

「見た目通りの『もやしっ子』だな、アイツ」

山倉の口から『もやしっ子』などという、死語に近い可愛い表現が飛び出して、私は吹き出しそうになった。

本社との会議があると焦っていたはずの本田が、なぜか椅子から動こうとしていない。その姿を横目で確認しようと顔を向けると、バッチリ目が合ってしまった。

慌てて自分の視線をモニタへと戻したその時、背中に本田の声が飛んできた。

「長崎くん、ちょっと会議室に来てもらっていいかな?話しがある」

その冷たい口調に、心臓が掴まれるような感覚を覚えた。

「……はい」

私が答えると、本田はおもむろに立ち上がり、部屋の外へと出て行ってしまった。
私も慌ててその後を追った。

→NEXTパソコン版【入札編102】第二休憩室
→NEXTスマホ版【入札編102】第二休憩室

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

8月≫
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

戻る