六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編106】クソ不味いラーメン屋

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時計の針が天井を差して重なった頃、酒焼けしたような山倉の汚らしい声が耳に飛び込んできた。

「あーあ、今日もクソ不味いラーメンでも食ってくるかな」

その大きすぎるひとり言に反応する者は誰一人としていなかった。
山倉の言うラーメン屋は、会社の近所にある個人経営のこじんまりした店のことだった。私もこの仕事を始めた当初に一度だけ足を運んだが、昼時でも空席が目立つこと以外に褒める要素が無く、二度とのれんをくぐることはなかった。

山倉が首の骨を鳴らしながら部屋から出ていった。それからしばらくは誰も会話することも無く、キーボードを叩く音だけが室内に響いた。

そろそろ山倉が不味いラーメンに箸をつけ始めたであろう、十二時二十分。
私はおもむろに立ち上がった。わざとらしく大きなため息をつき、『仕事に疲れたから休憩にいくアピール』をしてみせた。

ズボンのポケットに財布と携帯電話を滑り込ませると、後ろの席に座る美瑠希の肩をほんの僅かに触れた。

それに気づいた美瑠希は、私の方を見上げた。私は眉を上げて合図をすると、言葉は交わさずに一人で部屋から出た。

エレベーターの前で携帯をいじりながら待っていると、部屋から美瑠希が出てきた。
私はすぐにエレベーターに乗り込み、彼女を招き入れた。

「今から快人に電話かけるよ。食事はそれが終わってからのつもりだけど……」

「快人……っていうか、本田さんは何て言ってたの?」

美瑠希の問いに答えに詰まり、私は扉の上の階数表示に視線を向けた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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