六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編107】斜め三歩後ろ

←BACKパソコン版【入札編106】クソ不味いラーメン屋
←BACKスマホ版【入札編106】クソ不味いラーメン屋

エレベーターが一階に着き、数時間ぶりに外の空気を吸う。たった数時間ではあるが、仕事場から開放されるこの感じはなんとも言えず心地良い。

「コンビニでパンと飲み物でも買って、バスケの公園で食べようと思ってたんだけど……それでいい?」

「それは別にいいけど……」

斜後ろをついて歩く美瑠希は、本題を急かすように語尾を濁して答えた。
本当ならば公園に着いてから話すつもりだったが、そこまでもったいぶるのも美瑠希の精神衛生上良くないだろうと思い直した。

「快人……また仕事辞めるって言い出したらしいよ」

私は軽い口調で、東京の狭い青空に向かって言った。
ビルと首都高速の合間を、白い雲が流れていく。程よい騒音がむしろ心を落ち着かせてくれるようだ。

だが、その騒音の中から、さっきまで聞こえていたはずの美瑠希の足音が消えていた。
振り返ると、美瑠希は三メートルほど後方で右手を額にあてて立ち止まっていた。

私が一歩近づこうとすると、美瑠希は大きく息を吐きだしてからまた歩き始めた。

「別に美瑠希のせいじゃないよ」

「そう言ってくれるのはありがたいけど……でもアタシのせいだよ」

私のなぐさめの言葉は、空を切って喧騒に飲み込まれた。
確かに美瑠希の言うとおりかもしれないが、そうではないとも言ってやりたい。
なにせ、快人を焚き付けたのはこの私なのだから。

→NEXTパソコン版【入札編108】アウトドア派の住人
→NEXTスマホ版【入札編108】アウトドア派の住人

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

11月≫
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

戻る