六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編111】『無音』が聞こえるHRQ

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低くざらついた声が、私の左耳をくすぐった。だが、その声をかき消すように頭上を走る首都高速の騒音が右の鼓膜を揺さぶった。

私は慌てて人差し指を右耳に突っ込んで、声の方に意識を集中した。

「もしもし、聞こえる?俺だけど」

「あぁ……うん」

弱々しい返事が返ってきた。どこか声もかすれているように聞こえる。仕事を辞める辞めないとは別に、風邪を引いているのは本当なのかもしれない。

「今、時間大丈夫?」

「大丈夫だけど……むしろそっちは大丈夫なの?今どこから電話してるの?やけに後ろがうるさいけど」

「ゴメン。今食事休憩に出てるとこでさ。例の首都高の下のバスケの公園からなんだ」

「なんでそんなところから」

「どこでも良かったんだけどさ、適当な場所が無くて。うるさくて申し訳ない」

私がそう言うと、快人は「別にいいけど」と答えながら小さく鼻で笑った。

「風邪の方は大丈夫なの?なんか声も枯れてるみたいに聞こえるけど」

「あ?あぁ……まぁね。もうかなり良くなってきたかな」

その言葉が終わるやいなや、快人は電話口の向こうで咳払いをした。いい人過ぎて嘘を隠すのが下手なのか、それとも冗談でやっているのか判断しかねるほどわざとらしい咳払いだ。

「そうか。それならいいんだけど……」

私はひと呼吸入れてから、本題へと一歩足を踏み入れた。

「じゃあ、明日はいつも通り出勤できそう?」

私が尋ねると、沈黙だけが返ってきた。
それはまるで、4号機の『ホットロッドクイーン』でBIG確定演出の――無音が聞こえた――時のような感覚だった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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