六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編113】鳩じゃないんだから

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飲み込んだ唾が喉を通る音が、やけにうるさく感じた。
視線の先には、先ほどいたアウトドア派のおじさんが、ダンボールで出来た『自宅』から這い出して背伸びをしている姿があった。

私は視線を自分の足元へと落とし、右手で頭をかかえるような体勢をとった。

「ん?何を?」

つとめて明るい口調で、さも何も知らないといった雰囲気を醸し出してみた。それが快人にどの程度通用するのかは分からなかったが、話の流れ的にそうするしかなかった。

「本田さん、俺のこと何も言ってなかったの?」

「風邪で休むとしか聞いてないけど。どうかしたの?」

我ながらヘタな芝居だと思う。ポッと出のアイドルがドラマや映画の主演に担がれて、その酷い演技を酷評される姿が思い浮かんだ。普段ならば私も一視聴者の立場から酷評するところだが、今なら『アイドルだって一生懸命やってんだよ!』と全力で擁護するだろう。芝居がヘタだろうと、もはやこの方針で突き進むしかない。

しばし沈黙が続く。電話の向こうの快人が悩んでいる姿が手に取るようにわかる。何と言おうか、または言わないべきか、迷っているのだろう。

沈黙に耐えかねた私は、間をつなぐために、とりあえず目に入ったものを口に出した。

「バスケの公園にアウトドア派のおじさんが住みついちゃってるよ」

「アウトドア派?あぁ、あの人か。あの人だったら前にパンをあげたことあるよ」

「マジで!?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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