六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編120】決心、ついた

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「もしもし?」

携帯電話を受け取った私はベンチに腰掛け、恐る恐る声を発した。

「いきなり美瑠希が出たから驚いたよ」

快人の口調は表面上はいつもと変わらず穏やかなものであったが、鼻で笑うような語尾からは、明らかに侮蔑的な雰囲気を醸し出していた。

「俺が話してたのに無理矢理奪い取られてさ……」

奪い取られたという表現はまずかったかと思い、チラリと美瑠希の顔をうかがう。
彼女はもうすでに興味を失ってしまったのか、サンドイッチの残りを無邪気に頬張っていた。

「仲良いんだな、相変わらず」

「いや……そういうわけじゃないけど」

快人から飛んでくる冷たい矢を避けるのに必死だ。話がそちらに流れると私としても面倒なので、本題へと軌道修正することにした。

「それで、結局どうすんの?」

「何が?」

「だから……仕事」

「あぁ……」

そこまで言うと、快人は口をつぐんでしまった。電話口からは快人の鼻息だけが聞こえてくる。私は黙って待つ姿勢をを見せると同時に、ひとつため息をついて返事を急かした。

それに気づいたのかどうかは分からないが、快人が再び口を開いた。

「やっぱり辞めるわ。決心ついた」

その口調は、決心という前向きなものではなく、どこか諦めにも似た感情に覆われているようだった。

さすがにこれ以上説得しても、翻意は不可能だ。
私は小さく「そうか」とだけ答えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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