六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編121】今は、きっと笑えない

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私はベンチに深く座り直した。
顔を上げると、ヘビの腹のようにうねった二本の首都高速の隙間から、青空が覗いていた。白い雲がゆっくりと流れていく。上空の天気も穏やかなのだろう。

「だからさ、俺から本田さんにあらためて電話するから。本田さんにもそう伝えといて」

「わかった。でも今日はおそらく夕方にならないと戻らないよ。本社との打ち合わせで忙しいんだってさ」

「そうか。あの人も大変だね、本社と末端の間に挟まれてさ」

快人は哀れみとも取れる口ぶりでそう言った。
私はそれに同調するように笑った。

「辞めちゃうのは残念だけどさ……やめた後はどうするの?まさか働かないわけにはいかないでしょ。ニートになるの?」

最後くらい、笑っていた方がお互いに寝覚めも良いだろう。そう思い、軽口を叩いてみた。

「少し疲れたしね、しばらくはニートでいるよ」

「ホントに!?でもまぁそれもいいかもね。でも『失業保険』は申請しないと支給されないからな、きちんと会社から離職票もらってハローワーク行きなよ」

「そうだ、失業保険もらえるんだった。これでニートが捗るな」

快人らしからぬ軽妙なギャグに思わず吹き出してしまった。

「ま、ニートの間はまた前みたいにオンラインゲームやって、レアアイテムをウェブオクで売りさばいて稼ぐよ」

「スゴイね、手に職つけてるじゃん」

「そうだろ?」

また、二人で笑った。

――じゃあまた前みたいに、オンラインゲームの中で結婚すればいいじゃん

会話の勢いで喉元まで出かかったそんな言葉を、慌てて飲み込んだ。
今は、きっと笑えない。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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