六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編125】家庭の事情ってやつだ

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窓から差し込む弱々しい陽の光を、ブラインドが無残にも遮る。
パソコンの電源ボタンを押すと、黒い箱の中で何かが高速回転を始める音が聞こえてきた。Windowsだけは今日も変わらず元気なようだ。

「えーと、今日はこれで全員かな?」

おもむろに本田が口を開いた。どうやら、私が出勤するのを待っていたようだ。
私は椅子に座ったまま身体を本田の方へ向けた。他の者たちも全員本田の方を向いている。

「ちょっと聞いて欲しいことがある……」

本田が立ち上がりながら言った。口調に覇気がない。

私は、いまから本田が口にする内容をほとんど正確に予想することができた。ディープインパクトの菊花賞と同じ、単勝元返しの自信度だ。

「昨日の夜、快人から電話があってね……。彼、仕事を辞めることになった」

本田はそう言うと、口を真一文字に結んだ。
私の予想は当然のことながら、当たった。だが単勝元返しなので儲けはゼロだ。

それなりにインパクトのある発表なはずだが、驚きをみせるものは誰一人としていなかった。やはり、想定の範囲内ということなのだろう。唯一反応をみせたのは、嘲笑気味に鼻を鳴らした山倉だった。

「なんでなんスか?理由は?」

山倉は、誰もが気になりつつも『それ聞いて一体何になるの?』と思って訊けないことをあっさりと尋ねた。デリカシーというものが欠落しているのだろうか。

「まぁ……家庭の事情ってやつだ」

本田がそう答えると、山倉は口を曲げてまた鼻を鳴らした。
山倉に比べて本田の心配りの繊細さには頭が下がる。

「そういうわけだから、快人がやってた仕事は当面……美瑠希が引き継いでやってくれるか?」

本田は美瑠希に尋ねた。
美瑠希は声にならない声で「はい」と小さく答えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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