六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編126】天使のウインク

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快人が仕事を辞めてから一ヶ月ほどが経ったある日の朝。
始業時間を10分ほど過ぎてから、本田が部屋に入ってきた。

簡単な挨拶を済ませた彼は、部屋のちょうど真ん中のあたりで揉み手をしたあと、一本締めのようにポンとひとつ手を叩いた。

「ちょっとみんな、作業の手を止めて聞いてくれるかな」

その声に、全員が手を止め本田の方を振り返った。

「実は今日、人事異動……ってほどではないんだけど、ちょっと配置換えみたいなものをやります。それじゃあ美瑠希、立ってくれる?」

本田に促され、美瑠希が神妙な顔で立ち上がった。

「快人が辞めてからちょっと役職がグダグダになってたけど、今日から美瑠希には『副管理者』になってもらうことになりました」

本田がそう宣言すると、美瑠希は小さく会釈した。
私も初耳だったが、山倉をはじめとする他のメンバーも驚いている様子なので、水面下で進められたことなのだろう。

「今日からは『管理者』が僕、『副管理者』が美瑠希ということになります。なので、僕がいない時は基本的に美瑠希の指示に従ってください。いいですか?」

本田が全員の顔を見回した。
私は驚きつつも小さく何度も頷いてみせた。

「じゃあ美瑠希からも簡単に挨拶を」

「え……っと、これからもよろしくお願いします」

美瑠希ははにかみながら小さな声で呟いた。

「じゃあ僕はまた本社に出向かなきゃいけないから……美瑠希、あとのことは頼んだよ」

そう言って本田は部屋から出ようとしたが、何かを思い出したようにすぐにきびすを返した。

「そうそう、しばらくしたらまた新人さんが入るから。その時はみんなよろしくね」

それだけを言い残して、本田は颯爽と消えていった。

小さなため息とともに椅子に座った美瑠希の方を見やると、彼女もこちらを見返してきた。
何か声をかけてあげようかと思っていたら、彼女から思いがけずウインクされてしまった。

それがどういう意味なのかはわからなかったが、悪い気はしなかった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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