六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編129】実家に『戻る』

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「今日はどこに行ってたのさ」

「最初に新宿に行って、そのあと池袋に移動して友達とお茶してた」

「ふーん」

訊いたはいいものの、そもそも大して興味はなかったので思わず生返事が出た。それをあくびでごまかし、改札へと向かう。

大きな紙袋を横にして、狭い改札を通り抜ける。この紙袋程度でも横にすると通れないのだから、小錦レベルの巨漢はまず通れないだろうなと愚にもつかないことを想像してしまった。

駅の改札を出ると、いつもと変わらな光景がそこには広がっていた。
会社帰りのサラリーマン。買い物帰りの主婦。学習塾から漏れる灯り。
傍らをついて歩く裕子も、何も変わってはいなかった。

「晩御飯はどうしようか。お腹空いてる?」

「メチャクチャ空いてるよ!4時間くらいずっとしゃべってたからね」

「そんなに?喫茶店では何か食べなかったの?」

「コーヒーだけで粘ってた」

そう言って、裕子はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「じゃあ久しぶりにピザのデリバリーでも頼もうか」

「あっ!……うーん、いいんだけどねぇ……」

「なんで?ピザはイヤ?」

「家に帰ってすぐに注文しても、そこから三十分はかかるよね。それまでこの腹ペコが我慢できない……」

「そんなに腹減ってるの!?でも、この大荷物じゃあコンビニ寄るのも面倒だよ」

私は裕子に持たされている大きな紙袋を掲げてみせた。
それを見て裕子は口を尖らせた。

「まぁいいじゃん、ピザ美味いぜ?」

「わかった。我慢する」

裕子は説き伏せられた駄々っ子のような口調で言った。

ふと、裕子が私の家に行くことを『帰る』という言い方をしてることに気づいた。
思い返してみると、最近は実家に『戻る』と言っていたような気がする。

私は胸のあたりにモヤモヤするものを抱えつつ、家路を歩いた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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