六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編132】女上司と男部下

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美瑠希の声を聞いた裕子は、眉を大きく跳ね上げ、「へー」と言わんばかりに口を丸く尖らせた。

そして私の肩から手を離すと、蔑むような目つきをして大きく息を吸い込んだ。

「早くピザ屋さんに電話してもらえませんかぁ?」

山に向かってヤッホーと叫ぶ登山家のように口元に手をあてて、裕子はわざとらしく大きな声を出した。語尾を必要以上に上げた言い方も実に鼻につく。

「ゴメン、ちょっと待っててね」

私は美瑠希にそう言うと、送話口に手をあてて裕子に言った。

「会社の人だよ。それも、俺の直属の上司になる人なんだよ」

「女上司だ」

「そうだよ!何かおかしい?」

「なんで女上司が男部下の携帯に電話してくるのよ?」

「あ……」

裕子の激しいツッコミに答えに窮してしまった。確かにその通りだ。これまでもメールでのやりとりは何度かあったが、電話というのはほとんど記憶に無い。

「だから……それを今から訊くんだろ」

もっともな回答が導き出せて胸をなでおろした。
裕子もこう言われてしまってはぐうの音も出ないのだろう。二三歩後ずさりして、壁に寄りかかって手のひらを上に向けてみせた。「どうぞ、電話を続けて」ということのようだ。

私は裕子の監視の元、美瑠希との電話を再開させた。

「もしもし、お待たせしました。で、どうされました?」

上司と言った手前、今さらではあるが敬語まじりで話すことにした。

――全部聞こえてたよ。

「アレ?聞こえてましたか?」

どうやら送話口をしっかりと押さえられていなかったらしい。

――彼女さんと……仲良いんだね。

美瑠希はポツリとつぶやいた。
その口調が落胆に満ちている理由を、訊いてはいけないのだろうなと思った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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