六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編18】知らない女と帰り道

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「だから、職場に可愛い娘はいたかって訊いてるの」

唐突な質問に、私はズボンを脱ぐ動作を止めた。

「ウチの職場はホラ……そもそも女子がほとんどいないから。昨日も言ったろ、一日中エロ画像とにらめっこしなきゃいけないような仕事なんだぜ。そんな職場に女の子なんて……」

「ほとんどいない……ってことは、少しはいるってことでしょ?」

語尾が跳ね上がると同時に、キッチンと居間を隔てるドアが開いた。そこにはカレー皿を手にした裕子が仁王立ちでこちらを見下ろしていた。

「あ……俺はご飯少なめでいいや」

「その女の子は可愛かったの?」

なぜこんなにも詰め寄られなければならないのかと、私は脳をフル回転させた。実は職場を監視されていて、就業後に美瑠希と一緒に駅まで歩いたところを見られてしまったのだろうか。もしかして、その時に美瑠希の香水の匂いが服に付いてしまっていたのだろうか。私はシャツを脱ぐフリをして、さりげなく匂いを嗅いでみた。だが、自分の加齢臭と思しき香りしかしなかった。

結局、裕子はカマをかけているだけだと判断し、私は努めて冷静に返答した。

「いや、普通じゃないかな」

私の言葉が裕子の耳に届くと同時に、彼女の眉がピクリと動いた。まるで、犯人に目星はついているが証拠を固めるために泳がせている女刑事のようだ。

私はそれ以上何も言わず、フリースに頭を通した。裕子は思わせぶりに「ふーん」とだけ言い残し、キッチンへと戻っていった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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