六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編19】嘘と浮気と辛口カレー

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私は音を立てずに深くため息をついた。確かに私は少しだけ嘘をついた。美瑠希は普通ではなく、可愛かったのだから。裕子はその小さな嘘を敏感に読み取ったというのだろうか。

心にもやもやしたものを抱えたままベッドに腰掛け、テレビのリモコンを手に取った。その時、脱ぎ捨てたズボンのポケットの中で、携帯の呼び出し音が鳴り響いた。私は這いつくばるようにしてそれを取り出した。同時に、しゃもじを持った裕子がこちらに顔を向けた。

裕子の視線を気にしながら携帯を開くと、メールの着信が一件あった。

――『お疲れ様。また明日』

短いそのメールの最後には、動きのあるハートの絵文字がついていた。素早く一読すると、すぐに携帯にロックを掛けてベッドに放り投げた。

「昨日話した俺の教育係の男の人からだった。明日もよろしくだって」

「ふーん」

訝しげにこちらを見る裕子と目を合わせていられず、私はテレビに視線をやった。

ひな壇に座る芸人たちが、司会者に対して反旗を翻しているところだった。特に面白くもなかったが、私は小さく鼻で笑った。裕子はしばらくテレビを見つめていたが、すぐにキッチンへと戻っていった。

――どうして美瑠希からのメールを、快人からだと言ってしまったのだろう。

言い訳じみた答えが頭の中に浮かんでは消えた。

今日のカレーはいつもより辛く感じた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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