六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編20】菱の代紋

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入社して二週間が過ぎた。仕事にもすっかり慣れ、職場での人間関係も「一人を除いて」は順調といえた。ぶっきらぼうだった快人も私に心を開いてくれたようで、コミュニケーションもスムーズに取れるようになってきた。

「今日から『代紋』と『銃刀法』の削除基準をやる。でもこれらは削除しないから注意して」

パソコンが立ち上がると同時に、快人が小鳥のさえずりのように呟いた。相変わらずの小声だ。だが、「もっと大きな声でしゃべってください」とは言えないオーラを発しているので、快人が何か話し始めたら私が顔を近づけるというのがお決まりのパターンになっていた。

「『代紋』と『銃刀法』ですか。なんか物騒ですね」

「めったに出品されないけど、発見した時はスルーは許されないから。とりあえず基準書の『代紋』の項目を開いて」

ウェブオクで何を削除するかは、ネットワーク上に保存された『削除基準書』に全て記載されている。これを元に、削除すべき出品なのか否かを判断することになる。

違法な物やウェブオクの利用規約に抵触する出品はすみやかに削除する必要がある。だが、一見すると違法・不適切に見える出品であっても、よくよく確認すると問題の無い場合がある。こういった「問題の無い出品」を誤って削除してしまうことを『誤削除』と呼び、この仕事に置いてもっとも注意すべきミスとされている。

削除基準書の『代紋』をクリックすると、いくつかの画像とその説明が表示された。それを指差して快人が口を開いた。

「これが暴力団の『代紋』。見たことある?」

「Vシネマで清水健太郎の事務所に飾ってあるのは見たことあります」

そう答えると、快人は口元を抑えてニヤついた。

その時、入り口のドアが開く音が聞こえた。私は振り向かずとも、その人物が誰なのか正確に言い当てられるようになってきた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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