六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編21】罰金10万円也

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「おはようございます!寝坊しました!」

張りのある声が耳に届いた。声のした方に顔を向けると、そこには額に手をあてて弱々しい敬礼のポーズをとる美瑠希の姿があった。

私が座ったまま小さく敬礼をして見せると、美瑠希は笑顔で手を振り返してくれた。美瑠希はすぐに私と快人の背後のデスクへと着席した。

この職場は、仕事に必要なものは全て、各パソコンとネットワーク上に保存されている。そのため、基本的にはどのパソコンを使用してもよいことになっていた。

それでも人には慣れというものがあるらしく、ほとんど全員がいつも同じパソコンを使って作業をしていた。私と快人は窓際の席、その背後に美瑠希というのが定番のフォーメーションだ。

背後から美瑠希の荒い息遣いが聞こえてきた。おそらく駅からここまで走ってきたのだろう。これはほぼ毎日繰り返されている光景だった。

「お前また遅刻してんのかよ!今月に入ってから何回目だよ!」

ジャイアンの声帯をさらに握りつぶしたようなダミ声が、色気さえ感じる美瑠希の息遣いをかき消した。美瑠希が遅刻した日にはいつも聞かされる怒号だ。

この職場で唯一苦手な人物――山倉柔造が、美瑠希のデスクを挟んだ向こう側に仁王立ちしていた。

「すみません。気をつけます」

「何回それ言うんだよ!聞き飽きたぞ!もうウチの会社も遅刻と欠勤には罰金制度作ろうぜ」

両膝に手を乗せて小さくなる美瑠希に、山倉柔造は容赦なく罵声を浴びせる。

「プロ野球のチームでも練習に遅刻したら罰金10万円とかあるだろ。あれと一緒だよ。良いと思うだろ!なぁ快人ぉ!?」

突然話を振られた快人は大きく体をビクつかせた。彼はキーボードの上で指を這わせながら、モニタを見たまま僅かに首を傾げた。それが彼なりの精一杯の抵抗なのだろう。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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