六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編23】『代紋エンブレムTAKE2』ばっか

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普段口数の少ない快人にしては珍しい軽妙な回答に、思わず吹き出してしまった。快人も自分で言ったことに満足したのか、口元を手で隠して笑っている。

「とにかく、発見しても勝手に削除しちゃダメ。だからといって、見逃すのはもっとダメ」

私は「わかりました」と答え、代紋の画像を凝視した。

キーボードを叩く音とマウスをクリックする音だけが室内に響く。初めの頃はこの音の中で八時間もいるのは苦行以外の何物でもないと思ったが、慣れてしまえばこれが心地良く感じるのだから人間はわからない。

基準書の代紋の項目を一通り確認し終え、快人にアイコンタクトを送った。快人はそれに気づき、こちらに顔を寄せてきた。

「確認が終わったら、いつものようにブラウザのお気に入りにある『代紋検索』をクリックしてやってみて。どうせ無いと思うけど」

ブラウザのお気に入りには、ウェブオクの商品検索ページが、検索ワードごとあらかじめ登録されている。要するに、違反出品が抽出できそうな検索ワードをあらかじめ登録してあるのだ。

例えば、『アダルト未成年』の場合は、アダルトカテゴリで『18歳』『女子高生』『JK』などの単語で検索したページがお気に入りに登録されている。

快人の指示に従って、お気に入りの『代紋』を開いた。

すると、検索窓には『代紋』『山口組』『稲川会』などの文字が並び、その単語で抽出された出品が一覧となって表示された。その数は420件と表示された。

「結構ヒットするんですね」

「でもほとんどDVDか漫画だから。でも一応全部チェックして」

「わかりました。でも暴対法が成立したおかげで、ウチの会社的には面倒な仕事が増えちゃったんですね」

出品画面を開きながらそう言うと、快人は口の端を上げて「確かに」と答えた。

快人のいうとおり、検索でヒットした出品の多くは『代紋エンブレムTAKE2』という漫画だった。これならば数の割には早く終わりそうだなと思った時、快人が大きく息を吸い込む音が聞こえた。

「遅刻したら罰金なんて法律……作っちゃダメだ」

快人がひとりごとのように呟いた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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