六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編28】「イチャイチャしやがって」

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それまでのやりとりを黙って聞いていた快人がゆっくりと立ち上がった。だが、顔は俯いたまま視線は定まらず、胸の前で合わせた両手は小刻みに震えていた。まるで命乞いをする老人のようだ。

「山倉さん……。美瑠希にそんな言い方しないでください。元はといえば僕が誤削除しちゃったのが悪いんですから」

蚊の鳴くような声ではあったが、静まり返ったこの部屋にいる全員の鼓膜を揺らすには十分だった。

山倉は悪びれた様子もなく、小馬鹿にしたように肩をすくめた。

「誤削除野郎は黙ってろよ。お前が悪いのは分かってるからさ」

山倉の言葉には悪意しか感じられなかった。言われた快人の顔がみるみる紅潮していく。だが、快人は何も言い返さなかった。

「あたしは仕事だからアダルトカテもやってるだけで、別に喜んでなんかいません」

言い返したのは美瑠希だった。彼女はまんじりともせず山倉の顔を睨みつけていた。一歩も引かないという構えだ。もはやどうやってこの事態の収集すればいいのか皆目見当もつかない。

私がオロオロしていると、山倉はその大きな右手を机につき、左手で目尻を掻きながら言った。

「新人が入ってくるたびにイチャイチャしやがって。コイツはそういう女だからな。お前も気をつけろよ」

そう言って山倉は私の顔を指差した。突然のことで一瞬狼狽したが、突きつけられた指からすぐに焦点をずらし、美瑠希の方へと向けた。すると、今度は美瑠希の顔が紅潮していくのがわかった。

その時、部屋のドアが開いた。

「騒がしいけど、どうした?」

本田が優しい口調で尋ねてきた。
だが、その問いかけには誰も答えなかった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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