六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編32】飲み会に、という嘘

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「やっちゃったものは仕方ないですよ。快人以外の人も誤削除やちゃってますしね、過去に。だから快人も大丈夫ですよ」

頭上走る首都高を見上げながら、美瑠希が言った。その口調は、どこかあっけらかんとしてた。私は「そうなんだ」と軽く答えた。

普段から物静かで繊細な快人が今日のミスで凹んでいないか心配だったが、これまでもあったことならば大丈夫なのだろうと思うことにした。

私と快人、そして美瑠希の三人で水天宮前駅までの道のりを一緒に歩くことが多かった。仕事から解放されて外の空気を肺に取り込むこの五分足らずの時間が私は好きだった。もちろん、美瑠希と交す他愛もない会話も楽しみだった。

首都高の下にあるバスケットコートで中学生くらいの男子が3on3に興じていた。それを横目で見ていると、バスケ部だった学生時代を思い出して体がうずうずした。

コンビニの前を通り過ぎた時、ポケットから携帯を取り出した。仕事が終わるといつも裕子にメールするのが習慣になっていた。

定型文のような文面を入力していると、不意に美瑠希が私の携帯を覗き込んできた。

「いつも誰にメールしてるんですか?」

突然の問いかけに狼狽してしまった。だが、それを悟られないように努めて平静を装った。

「友達に……ちょっとね」

「毎日、仕事が終わったら友達にメールしてるの?」

「いや、毎日ってわけじゃ……」

痛いところを突かれてしまった。美瑠希は「ふーん」と口を尖らせてつぶやいた。
私はひとまず携帯をポケットにしまい込んだ。すると、美瑠希が思いがけないことを口走った。

「じゃあ、これからご飯でも食べに行きませんか?」

「え?」

「近くにパスタ屋さんがあるんですよ。夜はお酒も飲めるんです。長崎さんってお酒は飲めるんですか?」

「あ……まぁ」

「じゃあ決まりですね」

そう言って、美瑠希は道案内するように私の前を歩き出してしまった。
私はその後をついて歩きながら、裕子へのメールの文面を考えていた。

――今日は職場の人と飲み会に行ってくるよ

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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