六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編37】とある男女の食事休憩

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午前中の仕事をあらかた片付け、時計に目をやると、午後一時を過ぎていた。椅子に座ったまま大きく背伸びをして振り返ると、美瑠希がひとりモニタに向かっていた。

この職場では休憩時間は明確に決められておらず、各々の判断で食事に出ることになっていた。美瑠希以外の人はいつの間にか食事に出たらしい。

私は足元に置いていたバッグを拾い上げ、その中に携帯が入っていることを確認してから美瑠希に声を掛けた。

「食事休憩、行かないんですか?」

そう尋ねると、美瑠希はキーボードを打つ手を止めた。

「長崎さんを待ってたんだよ。仕事終わった?」

名指しで「待っていた」と言われ、少しだけ胸が高鳴った。

「じゃあ行こうか」

美瑠希は立ち上がるなり、部屋のドアの方を指差した。

「あ……うん。何食べようか?」

「食事の前に、快人に電話しようよ」

美瑠希は、休憩室では人が多いからと言って、使っていない会議室に入るよう促した。そこは、出勤初日に本田と契約書を交わした部屋だった。

ドアを閉めると外部の音はほどんど聞こえなくなった。とりあえず座ろうとパイプ椅子を引くと、床と擦れて大きな音を立てた。

ブラインドの隙間から漏れてくる光だけでは薄暗かったが、二人とも灯りをつけようとはしなかった。

私はバッグから携帯を取り出した。美瑠希は椅子に座ってじっとこちらを見ている。

友人が少ない私の電話帳から快人の名前を探すことは容易だった。
8回目の呼び出し音が途中で止まった。短い沈黙の後、快人の重苦しい声が電波に乗って私の鼓膜に届いた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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