六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編38】悲嘆と糾弾

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「お疲れ様です。俺です」

なるべく特別な雰囲気を出さないように、あっけらかんとした口調で話しかけた。

「あぁ……」

電話の向こうで快人の絞りだすような声が聞こえた。
電話をしたものの、何を話せばいいのか考えていなかったので、早速会話が止まってしまった。
短い沈黙のあと、快人の唇が開く音がノイズとなって届いた。

「今、休憩中?」

私は「そうです」と返し、大きく息を吸い込んだ。

「どうして今日、休んだんですか?何かあったんですか?」

私が尋ねると、快人は小さく唸ってから言葉を紡ぎ始めた。

「本田さんから何も聞いてないの?」

「今日は快人は休みだってことだけ聞きました」

私は咄嗟に嘘をついた。隣で頬杖をつきながら見守っている美瑠希の眉がピクリと動いた。

「そうか……。聞いてないんだ」

電話の向こうで快人が困ったように頭を掻いている姿が想像できた。私は「何かあったんですか」と話の続きを促した。

「そのうち本田さんから話があると思うけど、俺仕事を辞めるつもりだから」

快人の口からようやく辞めるという言葉が出てきた。だが同時に、その言葉からは確固たる決意のようなものはなぜか感じられなかった。

「辞めるって、いきなりどうしてですか?昨日の誤削除の件ですか?」

矢継ぎ早に訊いた。快人のため息が聞こえた。

「まぁ……それもあるけど」

「やっぱりそうなんですか。美瑠希も言ってましたけど、誤削除なんて過去にも何人かがやっちゃってるらしいじゃないですか。だったらそんなに落ち込むことないじゃないですか。みんなの前で晒されたのは山倉さんが悪いんであって……」

「今、そこに美瑠希も一緒にいるの?」

こちらの話を遮って、快人が言った。私は何と答えればいいのか迷ってしまい、言葉に詰まってしまった。

「いるんだろ?お前ら、仲いいな」

それは、悲嘆と糾弾が入り混じったような口調だった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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