六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編47】頬杖をつく少女

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自席へと戻り仕事を再開したものの、どこか気持ちが落ち着かなかった。
トイレでの榎本との会話が脳内を駆け巡る。

確かに榎本の言うとおり、快人は美瑠希に気があるような素振りを当初は見せていたように思える。コミュ障気味の快人が頑張って話をしている様子は、傍から見ていてもどこか微笑ましかった。美瑠希もそんな快人の性格を知っているから、急かすようなことはせず、じっくり話を聞いてあげていた。それが快人には嬉しかったのだろう。

だからといって、美瑠希も快人に対して気があったのかと言われると疑問が残る。そもそも、彼女は私を含めて皆に愛想が良いのだ。山倉を除いては。

そんなことを考えながらダラダラと仕事をしていると、ブラインドから漏れる光が赤くなっていることに気づいた。ふとパソコンの右下の時計に目をやると、終業時刻まであと五分になっていた。

背伸びをしながら背後に目をやると、美瑠希がヤフーニュースを熱心に読みふけっている姿が見えた。頬杖をついて少しだけ口を尖らせたその横顔は、やはり愛嬌があった。

カチカチとマウスのクリック音が止めどなく聞こえる隣の席に目をやると、快人はマインスイーパの上級を遊んでいた。彼は仕事を終える前に一度だけ上級にチャレンジするのが日課になっていた。といっても、本田と山倉がいない日だけなのだが。

デジタル時計の右側にゼロが二つ並んだ。一斉にタイムカードの前へと群がる。

「お先に」

今日、タイムカードに初手を付けたのは美瑠希だった。いつもならば私や快人と一緒に並んで押していたはずなのに。彼女はこちらを一瞥もせず、そしてそのまま部屋を出て行ってしまった。

私は美瑠希の背中を見送ってから、快人の方に顔を向けた。快人はごそごそとバッグに手を突っ込んで何かを探しているようだった。

私にはそれが、どこかわざとらしく見えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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