六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編53】スロットは、なんかイヤ

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「今度の休みの日、どこか遊びに行こうよ」

包丁とまな板がぶつかりあう音に合わせて、裕子が言った。

「ちょうど俺も誘おうと思ってたんだよ。久しぶりにスロットでも打ちに行くか?」

ユニクロで買った上下1980円のスウェットに袖を通し、髪を整えた。部屋着に着替えると途端に精神が「だらけモード」に切り替わる気がする。台所からは、熱せられたオリーブオイルの中でにんにくが弾ける音が聞こえてきた。

「スロットねぇ……」

「あれ、イヤ?」

「イヤではないけど……」

裕子はフライパンの端を菜箸でコンコンと叩いた。その横顔は、どこか物憂げな表情に見えた。

「ま、何か他の案も考えてみる。ちなみにパスタ以外には何も用意してないからね」

「十分だよ。汁物はレトルトのコーンスープがあったでしょ。それ用にお湯沸かしといて」

「パスタのゆで汁があるじゃん」

「あなたねぇ……『やきそば弁当』についてるスープじゃないんだから……」

私は台所へ向かい、やかんに水を入れた。隣にはにんにくと鷹の爪を炒める裕子がいる。

私の顎の高さに裕子の頭があった。ふと、美瑠希のことが頭をよぎった。美瑠希の方が裕子よりも少しだけ身長が高いのだなと気づいた。

不意に裕子が私の顔を覗き込んできた。私は心の中を見透かされたのではないかと思い、慌ててやかんへと視線を逸らした。

短い沈黙が流れる。なんとなく気まずいこの空気を打破するにはどうすればよいかと思いを巡らせていると、快人の件を裕子に相談してみようかと思い立った。

「なぁ……気のある女の子と仲良くなるにはどうすればいいと思う?」

「誰と仲良くなる気や!」

またしても菜箸で叩かれたフライパンに対して、私は心の中で謝罪した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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