六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編66】エロティックな口元

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私の話が終わると、美瑠希は両手でバックを持ち、がっくりとうなだれてしまった。だが、九十度に曲がった首の先にある白い頬は、さっきまでとは違う膨らみをみせていた。

「ありがと。大丈夫、気にしてないから」

目尻を下げ、笑みを浮かべる美瑠希の顔を見て、私はひとまず胸を撫で下ろした。

歩行誘導のための「ピヨピヨ」という音が交差点に響き渡る。横断歩道を渡り、『ドトール』に着いた。店内は空席が目立った。

二人とも、ミラノサンドとカフェオレという小洒落た組み合わせを注文し、二階の窓際の席に腰を下ろした。それにしても、たったこれだけの量で700円を超えるというのだから驚きだ。だが同時に、スロットのコインで換算すると35枚ということに気づき、それくらいなら誤差だなと思ってしまった。

ミラノサンドにかぶりつき、窓の外を見下ろす。行き交う人たちを見ていると、こうして昼食を取っているだけの自分が、何か偉くなったような感覚を覚えた。

「快人は一緒じゃないんだ」

不意に美瑠希が口を開いた。私は口の端についたソースを慌てて指で拭った。

「一応、誘ったんだけどね。なんか仕事が残ってたみたいで、フラれたよ」

そう答えると、美瑠希はストローを口に咥えたまま「ふーん」と小さく頷いた。
私は、ストローを咥えた美瑠希の口元が妙にエロティックに見えて、すぐに視線を逸らした。

「あーあ」

美瑠希が嘆息を漏らした。手に取ったミラノサンドをくるくる回して、どこから食べようか考えているようだ。

「それにしても山倉のヤツ!ムカつく!」

そう吐き捨てると同時に、美瑠希はミラノサンドの端の方からかぶりついた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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