六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編68】ゾンビのように

←BACKパソコン版【コラム】四十五年ぶりという名のおおゆ機【100】
←BACKスマホ版【コラム】四十五年ぶりという名のおおゆ機【100】
←BACKパソコン版【入札編67】栗山千明『神話少女』
←BACKスマホ版【入札編67】栗山千明『神話少女』

言いたいことを全て言い切ったのだろう。美瑠希は満足したようにミラノサンドを完食した。それから他愛もない話をして休憩時間を費やした。やはり女性は総じておしゃべりなのだなと再確認する時間になった。

『ドトール』を後にして職場へと戻る途中、美瑠希が小さくため息をついた。

「あーあ、戻ったらまた山倉にグチグチ言われるのかぁ。男ってホント、面倒……」

つぶやくようなその口調は、過去に男性と何かあったのかを尋ねて欲しそうにも聞こえた。だが、そんな深い話を聞くには、職場までの道のりは短すぎた。私は「大丈夫だよ」とだけ答えた。

エレベーターが五階に着きドアが開くと、Aルームに入る本田の後ろ姿が一瞬だけ見えた。

「本田さん!ちょっといいッスか……」

閉じかけるドアの向こうから、山倉の声が聞こえた。ドアが閉まると、その声が聞こえなくなり、隣で美瑠希の大きなため息が聞こえた。

「山倉のヤツ、さっそく本田さんに報告してるよ。こういうときだけ仕事早いんだよねぇ」

美瑠希は眉をひそめて頭を掻いた。

「大丈夫。『誤削除』じゃないんだし、そこまで怒られないでしょ。そもそも本田さんってあまり怒らないよね」

「まぁね……」

私の最後の慰めの言葉に、美瑠希は生返事で答えた。美瑠希は肩をガックリと落とし、重々しい足取りでAルームの入り口へと向かった。その姿はまるでホラー映画のゾンビのようでもあった。

→NEXTパソコン版【入札編69】「何ヶ月この仕事やってんだよ」
→NEXTスマホ版【入札編69】「何ヶ月この仕事やってんだよ」

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

6月≫
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

戻る