六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編69】「何ヶ月この仕事やってんだよ」

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ガチャリと金属音が鳴りドアが開くと、山倉の視線が突き刺さった。美瑠希はすぐに視線を落として自席へと腰を降ろした。私も彼女のすぐ後ろの自席へと座った。隣の席に快人の姿は無かった。おそらく食事休憩に出たのだろう。

「この出品なんスけど……」

山倉が本田のデスクでモニタを指差して何かを説明している。まず間違いなく美瑠希の件を報告しているのだろう。ヒソヒソ声で報告するその姿は、窓ガラスを割った犯人を先生に報告するジャイアンのようにも見えた。

美瑠希にもその会話は聞こえているはずだが、彼女は黙って自分の仕事を始めている。私もとりあえずパソコンを立ち上げ、仕事に戻ることにした。

「で……この出品は結局どうしたの?」

「俺が代わりに削除してやりましたよ。面倒くさい仕事増やされて……。何ヶ月この仕事やってんだって話しッスよ」

山倉の嫌味ったらしい言い草が鼓膜を揺らした。当事者ではない私が聞いても不快に感じるのだから、矛先が向いている美瑠希の心中は察して余りある。

横目で山倉の方を見ると、彼は体を起こして腕を組み、眉をハの字にして顎をさすっている。困ったものだ、とでも言いたげなようすだ。

「なるほどね……わかった。じゃあ仕事戻って」

「本人に言わないんですか?」

「俺が言うから。山倉くんは仕事に戻って」

本田が山倉の席を指差すと、山倉は憮然とした表情で踵を返した。

「美瑠希、ちょっと来てくれるかな」

本田が美瑠希を呼びつけた。美瑠希は消え入るような声で「はい」と答え、席を立った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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