六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編79】ご主人様がお帰りですよ

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その日、私は用事があるからと快人に伝え、終業時刻と同時に職場を飛び出した。

これからしばらくは、ありもしない用事をでっち上げる日々が続くことになるだろう。駅までの道のりは短いが、快人と美瑠希にとっては今まで以上に重要な時間になるはずだ。

私にできることはこれくらいだ。あとは、快人の行動力と度胸に任せることにしよう。

自宅に帰り着き、鍵穴にカギを差し込む。カチャリという音が響き、ドアノブを回し、ゆっくりとドアを開ける。やはり、チェーンロックが掛かっていた。

「裕子さんや、ご主人様がお帰りですよ」

ドアの隙間から口を突き出して言った。だが返事がない。まさか寝ているのか。そう思った次の瞬間、トイレの水が流れる音が聞こえた。

「はいはい、今開けますよ」

トイレのドアが開き、裕子が顔を出した。

「悪いね、急かしたみたいで」

「いいよ、別に。正吾の家なんだし」

チェーンロックを外すために一旦ドアを閉める。カチャカチャと金属が擦れ合う音が聞こえるが、なかなか外れないようだ。

「あーもう!正吾、これ取り替えてよ!面倒くさい!」

「コツを掴めば簡単に開くって……ほら」

ようやく開いたドアの向こうには、フリース姿の裕子が口を尖らせて立っていた。

「チェーンロックを交換するとなると、大家さんにお願いすることになるから面倒だよ」

裕子は子供のように「ふーん」と言って、リビングへと戻っていった。
ふと台所に目をやると、味噌汁とサラダが用意されていた。両手鍋をのフタを開けると、肉じゃがが完成していた。

私は口の中に唾液が分泌されるのを感じながら、急いで部屋着へと着替え始めた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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