六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編81】嘘のような気がしたから

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予想だにしていなかった裕子の発言に、視界の中のテレビ画面が激しく歪んだ。

「……は?」

まるでジャパネットたかたの社長のような上ずった声が出てしまった。我ながら悲しいほどに情けない声だ。

裕子が無表情のままこちらを見つめている。私は視線を合わせることができず、箸に乗せていたご飯を口へと押し込んだ。

米を咀嚼する僅かな時間で、私の頭はフル回転した。
なぜ裕子は突然『結婚』などということを口にしたのか。まさか妊娠したとでもいうのか。いや、それは無い。そうならないように万全を期しているのだから。

じゃあどうして。結婚を前提に付き合っているワケじゃないのなら今すぐ別れなさい、とでも両親に言われたのだろうか。?裕子は実はイイトコのお嬢さんだから、決して無い話ではない。

十分に咀嚼した米を飲み込もうとするが、なかなか喉の奥に入っていかない。
私はコップの水を喉に流し込み、小さく息を吐いた。

それを見て、裕子が小さく笑った。

「冗談だよ!アタシの友達が今度結婚するんだって。ご祝儀って確か、二万円じゃダメなんだよね、ちょうど割りきれちゃうからとか言って。でも三万円でも割り切れるじゃんね!ズルい風習だよ。二万一円とかにしようかな」

そう言って、裕子は頬を緩ませた。

「そうだね……確かによくわからん風習だよな」

私は、自分の頬の筋肉がひきつっていることを感じながら答えた。

だが、その友人が誰なのか、その結婚式がいつ行われるのかは訊かなかった。
友人も結婚式も、嘘のような気がしたから。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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