六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編91】絶対に喋ってはいけない職場

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その日の職場はいつも以上に静かだった。仕事に関することはチャットで済ませてしまうし、他愛もない話というものにいたっては皆無といってよかった。

呼吸をする音すらためらわれる時間が過ぎ、時計の針は午後一時を差した。
私はちょうど仕事のキリの良いところで無言で席を立った。

出入口の扉を開け部屋の外に出る。後ろ手で扉を閉めると、私は大きく息を吐きだした。この職場がこんなに居心地の悪い空気になったのは、以前快人が誤削除をやらかした時以来だった。

私は昼食に向かうべくエレベーターへと歩を進めた。
すると、背後から扉の開く音が聞こえた。振り返ると、そこには美瑠希の姿があった。

美瑠希は口の前で人差し指を立てて、今度はその指をエレベーターの方へと傾けた。

私は何かあるのだろうと察し、黙ってエレベーターに乗り込んだ。すぐに美瑠希も続いた。

エレベーターの扉が閉まると、美瑠希が口を開いた。

「今から食事休憩?」

「そのつもりだけど」

「そっか。じゃあ、もしイヤじゃなければ一緒に食べない?」

美瑠希とは今まで何度も昼食を共にしてきたが、――イヤじゃなければ――などと今まで一度も言われたことは無かった。その言葉にも、どこかよそよそしさを感じずにはいられなかった。

私は「いいよ」と短く答えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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