六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編92】通じない『客付き』

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外に出ると、午後の日差しが心地よくまぶたの奥に差し込んできた。

「どこにする?」

美瑠希が身体を屈めてこちらを覗き込んできた。あらためて見ると、色白でタレ目の美瑠希はなかなかの美人だ。

「信号を渡ったとこの『ドトール』でいいんじゃない?前にも行ったけど」

私がそう答えると、美瑠希はアヒル口で何度も頷いた。

ドトールまでの道のりを美瑠希と並んで歩く。傍目にはどう映っているのだろう。やはり恋人同士に見えるのだろうか。だが、平日の昼間にビジネス街――というか雑居ビル街――を歩いているのだから、恋人同士は無理があるかなと思い直した。

ドトールに着くまで美瑠希は無言だった。私が視線を向けると、眉を少し上げてこちらに尋ねるような仕草をしたが、自分から話し出すことはなかった。私も何を話していいのか決めあぐねている内に、店の前まで着いてしまったのだ。

店内に入り、注文の列へと並ぶ。お昼時を少し過ぎたとはいえ、店内は多くの客でごった返していた。

「この店はいつ来ても客付きが良いねぇ」

「キャクツキ?」

後ろから美瑠希が尋ねてきた。

「あぁ、席が埋まってる割合が高いってこと」

そう答えると、美瑠希はあごに人差し指を乗せて頷いた。
『客付き』というパチンコ・パチスロ用語をうっかり使ってしまった。別にスロット好きであることが後ろめたいわけではないが、こういう時、なぜか気恥ずかしくなってしまう。

同時に、美瑠希がパチンコやパチスロをやらないのだなということも期せずして確認することができた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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