六本木ヒルズからの七転八倒

【入札編98】うらやましいのは、どっち?

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ひとつの恋が終わった、ということなのだろう。隣でうつむく美瑠希と、仕事を『風邪で』休んだ快人。二人のことを思うと、今さらながら罪悪感が沸き上がってきた。

快人を焚き付けたのは間違いなく私だ。無責任に背中を押してしまったかもしれない。それによって、今までの良好だった美瑠希との関係さえも崩壊させてしまった。

私は快人をどうフォローすべきか考え始めた。美瑠希の方はおそらく大丈夫だろう。所詮、告白された側であるし、フッた側だ。それに美瑠希の可愛さと器量があれば、男なんていくらでも寄ってくるだろう。

「快人が急に休んだのは、やっぱりそれが原因かな?」

私が尋ねると、美瑠希は困ったように首を傾げた。

「そうじゃない方がうれしい……っていったら、風邪ひいてて欲しいって言ってるみたいだけど」

美瑠希は自嘲気味に笑った。
私も同調するように小さく笑い返した。

ふと携帯電話に目をやると、ここに座ってからすでに四〇分近く過ぎていた。そろそろ会社に戻らなければならない時間だ。

「そろそろ行こうか」

私がトレイを持って席を立とうとすると、美瑠希は口を尖らせて足をバタつかせた。まるで駄々をこねている子供のようだ。

「長崎さんって彼女いるんだよね?うらやましいなぁ」

窓の外に視線を向けたまま、美瑠希が唐突につぶやいた。
私は驚いて一瞬動きを止めたが、すぐにトレイを持って返却口へと歩き始めた。

少し遅れて、美瑠希が重い足取りで返却口へとトレイを置いた。
店の外に出ると、そこにはいつもと変わらない喧騒が待ち受けていた。

――どっちのことがうらやましいのか――は、職場に戻ってからも結局訊くことはできなかった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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