六本木ヒルズからの七転八倒

【初打編06】ゲチェナ?

「リプレイハズシとDDTでイチでも100パー超えッスからね!アオテンとかゲチェナとかマジ最高ッスよ!」

 
……なるほど。
 
かろうじて聞き取れた「100パー超え」「マジ最高」という言葉から、どうやら外国語ではないようだ。ただ、それ以外の言葉はまったく理解できなかった。いや、理解するどころか聞き取ることすらままならなかった。
 
「ん?ごめん、何?」
 
何から質問すればよいのかすら分からなかった私は、少し大げさに眉をひそめ、いぶかしげな表情を作って聞き返した。
 
「クランコっス、今日打つ機種が。メチャクチャ面白いし勝ちやすいッスよ!」
 
どうやら「クランコ」というのは機種の名前だったようだ。しかも面白いうえに勝ちやすいとは聞き捨てならない。
 
「ふーん、クランコかぁ。で、さっき言ってた100パーがどうのっていうのは何なの?」
 
聞いたところで理解できる自信はなかったが、とりあえず聞きなおしてみた。
 
「それはっスねぇ……100パーセント勝てるって意味っス!」
 
……激しい後悔が襲ってきた。
 
100パーセント勝てるってあなた……全ての客が勝ってしまったら 、スロット屋はどうやって成り立っているのかと。ビルゲイツあたりが設立した慈善団体なのか?
 
まったくの素人である私でも一瞬でウソだとわかった。仮にウソではなかったとしても、広げた風呂敷があまりにも大きすぎる。100パーセント勝てると言われて歓喜の声を上げる人もいるのかもしれないが、根が慎重派な私には不安しか感じなかった。
 
諦めにも似た感情が私の心を覆い始めた頃、聞き覚えのある曲が流れてきた。F1のテーマ曲でお馴染みのT-SQUAREの「TRUTH」だ。この曲が流れると同時に、列の前方が動き出した。どうやら入店が開始されたようだ。ここまできたら腹を決めるしかない。
 
「俺に付いてきてください!足もと見てないと危ないっスよ!」
 
マッチ棒のような堀口の後ろ姿がやけに頼もしく見えた。
 
「店内では走らないようにお願いします!ゆっくりと歩いてご入店ください!」
 
文言は丁寧ではあるが、興奮気味でやや語気の荒い店員の声がこだまする。客達は、焦る気持ちを必死に抑えつつ、早歩きで店内になだれ込む。私も堀口に続いて店内へと足を踏み入れた。店内はすでに客達でごった返していたが、182センチを誇る長身とマッシュルーム頭のおかげで、堀口を見失うことはなかった。
 

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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