六本木ヒルズからの七転八倒

【初打編08】スロット人生、スタート

「コインサンドっス!ここに千円入れるとコインが出てくるんスよ!」

堀口は台と台の間にある縦に細長い機械を指差しながらそう言うと、ズボンのポケットからLOUIS VUITTONと刻印された長財布を取り出し、慣れた手つきで千円札を投入した。

カシャカシャカシャカシャカシャ……

「貸出」の赤いランプが点灯し、先ほどから聞こえていた乾いた金属音と共に、コインが数十枚落ちてきた。ちょうどコインが落ちる場所に、取っ手の付いた10cm四方の器が用意されており、その中にコインが貯まる仕組みだ。コインの排出が終わると、器の取っ手を持ち、自分の台の下皿へと移す。

「ほー、なるほどね」

一連の流れを理解した私は、自分の分のコインを借りるために、色あせた二つ折り財布を開いた。そこには二人の福沢諭吉が鋭い眼光でこちらを見つめていた。

「両替機、あっちっスよ!」

他人の財布を覗くなよ……と思ったが、彼なりの気の使い方なのだろう。堀口が指差した方を見ると、両替機の前に並ぶ8人ほどの男達の姿があった。また並ぶのか……。出鼻をくじかれた感はあったが、上がってしまったテンションを元に戻すにはちょうどいいインターバルとなった。

福沢諭吉を十人の夏目漱石に変えて自席に戻ると、隣の堀口はすでに遊技を開始していた。私も置いていかれまいと、すぐさま千円札を投入する。
ついさっきまで日本中どこへ行っても千円の価値がある紙切れだったものが、乾いた金属音と共に、ここでしか価値の無い数十枚のコインに変わっていった。

「3枚っスよ!1枚でやっちゃダメっスよ!」

堀口は左手の親指と人差し指でコインを一枚つまみながらレクチャーしてくれた。私は言われた通り3枚のコインを投入し、ゆっくりとレバーを叩く。

これから長く続くスロット人生が、回り始めた。

 

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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