六本木ヒルズからの七転八倒

【初打編10】見える気がしない

堀口が差した指の先には、青7図柄が鎮座していた。

「とりあえずコレを狙うんスよ!青7を上段に……こんな感じっス!」

堀口はそう言いながら、いとも簡単に左リールの上段に青7を止めてみせた。そして、止まった青7を覗き込みながら

「この上にチェリーがあるんスよ!チェリーが成立してればスベってくるんスよ!」

なるほど。なんとなく分かったぞ。チェリーが当たる時はリールが下までスベってくるということだな。

少しずつスロットというものを理解していく。新しい事を覚えるのは知的好奇心が刺激されて新鮮な喜びを感じるものだ。高校生の頃に麻雀を覚えた時も、18歳で競馬を覚えた時も、同じような喜びがあった。

そんな感覚を思い出すと同時に、看過できない事案も発生していた。

――青7を上段に押せ、だと?

ベテランセールスマンが金持ちそうな邸宅のインターホンを押すかのごとく、堀口は難なく青7図柄を止めてみせたが、この高速回転しているリールがすべて見えているということなのか?

にわかには信じ難いが、堀口は「簡単ッスよ!」とも言っていた。それならばと、あらためてレバーを叩き、リールを凝視する。

……やはり無理だ。回転するリールはすべての図柄がひとつの筋となり、さながら長時間露光撮影された高速道路のようだ。何度も挑戦してみるが、まったく見える気がしない。

「リールに合わせて目を上から下に動かすんスよ!」
「この青7の色を目に焼き付けるんスよ!」
「一周のリズムを身体に覚えこませるんスよ!」

堀口はいろいろとアドバイスをくれるのだが、どうしても見えない。上達している感覚も無い。練習すれば本当に出来るようになるものなのだろうか。

私にはスロットの才能が無いのか……と、諦めかけたその時、堀口が自分の台を指差しながらニヤリと笑った。

「入ったッスよ!」

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  • 「チェリーがスベってくるんスよ!」「チェリーがスベってくるんスよ!」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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