六本木ヒルズからの七転八倒

【初打編12】「完全に運ッスね!」

四枚目、五枚目の千円札が次々とコインサンドに飲み込まれていく。コインサンドから吐き出されたコインは、そのままタカ目コンドル科の動物の餌となった。

入ったら教える、と言っていた堀口からも何の声もかからない。私の台は一体いつ当たるのだろうか。投資金額と比例するように、私の不安は増大していくばかりだった。

そんな私の不安をよそに、隣の堀口はまたしても7を揃えているではないか。なぜそんなに簡単に当たるのか。日頃の行いだったら私の方がはるかに良いと思う……というのは失礼か。

「長崎さん、当たんないっスねぇ」

同情するような表情で堀口が言った。モリモリ増える堀口の下皿を見ると、得も言われぬ焦りが襲ってくる。しかし、そんな感情を押し殺して、何喰わぬ顔で堀口に聞く。

「大当たり引くかどうかって、完全に運なの?」

「完全に運ッスね!」

そうか。運だったら努力のしようが無いし、仕方がないと諦めもつく。だが、立て続けに大当たりを引く堀口と、一度も引けない私では「お前は運が悪い」と言われているようでなんとも納得がいかない。

こうなったら、せめて一度くらい大当たりを引くまで帰れない。腹を決めて六枚目の千円札を投入する。だが、何も起こらない。七枚目の千円札を投入する。だが、何も起こらない。

「堀口さぁ、この台で本当に大丈夫なの?」

半ば八つ当たり気味に堀口に声をかける。だが、堀口からの返答がない。周りの台の音と店内のBGMにかき消されて声が届かなかったのかと思い、堀口の方を向いて驚嘆した。

なんと堀口は、隣の台に座った髪の長い妙齢の女性と楽しげに会話しているではないか。

……君はスゴイな、尊敬するよ。

初対面にも関わらず女性と仲睦まじく会話できる堀口のことが、正直、羨ましかった。そのスキルがあれば、そりゃあ3人の彼女と同時に付き合うことにもなるハズだ。楽しげな二人の間を邪魔をするのも無粋なので、さっきの問いかけは飲み込んで自分の台へと向き直った。

――はぁ

なんだか肩の力が抜けて、思わずため息が出てしまった。私は見ず知らずの女性と気軽に会話などできない。青7も見えない。おまけに大当たりも引けず、運まで悪いらしい。堀口の姿を見ていると、さっきまでの熱が一気に冷めていくのを感じた。

ここでは、私は何一つ勝てないようだ。

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  • 運まで悪いらしい。運まで悪いらしい。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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