六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編10】「診断書?」

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「あ、そうですか。っていうか、病院行ってなかったんですね」

「そうみたいだね。あんな怪我しといてねぇ」

店長は怪訝そうな顔をしながらそう言うと、私が持っていた空のコップを受け取り、カウンターの奥にあるキッチンへと入っていった。

「……ちゃん、ショーゴちゃん」

小鳥がささやくような小さな声で自分の名前が呼ばれた気がしたので振り返ってみると、D卓にポツンと一人で座るゲンさんが手招きをしていた。

ゲンさんと堀口が一体どんな話をしたのかが気になっていた私は、すぐさまゲンさんの元へと駆け寄った。

「堀口と何か話せましたか?」

「そうやなぁ……まー何ちゅうかなぁ……」

そこまで言うと、ゲンさんはズボンのポケットに忍ばせておいたタバコを取り出し、火をつけた。

「何があったんですか?」

「あれやな。けったいな話っちゅうか、難儀な話っちゅうかなぁ」

ゲンさんはその訛りから関西の出身のようだが、東京での生活が長くなってきたからか、標準語と関西弁が混ざった「エセ関西弁」のような話し方をすることが多かった。

「堀口の怪我、そんなに酷かったんですか?」

「いや、それは大したことないやろ。でも俺が病院行ってこいって言うた。で、医者の診断書もらってこいってな」

「診断書?」

「まぁ使うかどうかは別として、あって困るもんでもないしな」

「やっぱり、誰かに殴られたんですよね?」

「そらな、あの怪我やし」

やはりというか、当然というか。堀口の怪我は誰かに殴られたものだった。前日、私と別れてからの20時間弱の間に、一体何があったというのだろうか。私は事の核心に迫る質問をゲンさんにぶつけた。

「誰に殴られたんですか?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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