六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編11】「最近知り合った女がおるらしいんよ」

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確信に迫る私の質問に、ゲンさんは分かりやすく眉間にシワを寄せ、タバコの煙を天井へと向けて吐き出した。

「そうやなぁ。正吾ちゃんは知りたいやろうし、堀口ちゃんにもプライドがあるやろうし、俺には俺なりの考えがあるし……どうすっかなぁ」

ゲンさんは眉間のシワをさらに深くし、静かに目を閉じた。私はその間、身じろぎもせずにゲンさんの方をじっと見つめていた。ゲンさんはフッと目を開けると、タバコの先からこぼれ落ちそうになっている灰に気が付き、あわてて灰皿へと落とした。

「じゃあ……誰にも言うたらアカンで」

そう言うとゲンさんは、まだ半分以上残っていたタバコの火を灰皿のフチでギュッと押し消し、私の顔を覗きこんだ。

「最近知り合った女がおるらしいんよ」

それを聞いた私は、すぐに「千夏さん」の顔が思い浮かんだ。だが、ゲンさんの話の腰を折らないように、ここでは相槌を打つだけにとどめておいた。

「でな。昨日の夜、その女の家におったらしいんよ、二人でな」

「えぇ」

「そしたらな。イキナリ知らん男が合鍵で入ってきたんやて」

私はあまりのことに驚くと同時に呆れ果て、口をぽかんと開けてしまった。

「は~。なんすか、そのベタな昼ドラみたいな展開」

「な、俺もそう思うわ。で、『兄ちゃん!なにしとんじゃー!』ってね」

「まぁそうなりますよね」

「で、2~3発もろたらしいわ」

「は~……」

堀口の怪我の原因を知り、少しホッとすると同時に、胸の奥に新しいモヤモヤが発生しているのを感じた。

――あの千夏さんが?まさか……

「でな……」

私が言葉を失っていると、ゲンさんは麻雀卓の上に上半身を突っ伏すような格好で、さっきよりも声をひそめて話し始めた。

「それだけじゃ終わらんよな……当然」

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  • タバコの煙に撒かれると、燻製の気持ちが少しだけ分かる。タバコの煙に撒かれると、燻製の気持ちが少しだけ分かる。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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