六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編12】『足して20』の男

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ゲンさんは、和気藹々とゲームが進むB卓の方をチラリと確認してから、私の目を見て言った。

「そいでな、その男が言うんやて。『ワシの女を寝取るたぁエエ度胸しとるやんけ!誠意見せろや!』てさ。そんなもん、Vシネの見過ぎやろ。お前はシミケンか白龍かっちゅー話やで」

そう言ってゲンさんは、クックックと声を殺して笑った。確かにバカバカしい話ではあるが、実際にその状況に直面した堀口の心情を考えると、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。

「その、『誠意見せろ』の『誠意』っていうのは、当然……」

私はほとんどその意味を理解してはいたが、念のためゲンさんに聞き直した。

「まぁな。ハッキリとは言わんかったみたいやけどな。当然そういうことやろ。ガキの使いちゃうんやし」

それを聞いた私は、思わず天を仰いだ。自分のことではないとはいえ、なんとも気の滅入る話だ。もはや聞く気が失せてきたが、ゲンさんは構わず続ける。 

「でな、その入ってきたっていう男がさ……『足して20』っぽかったって、堀口ちゃんが言うわけよ」

『足して20』とは、ゲンさんがときどき口にする表現だった。8+9+3で20。要するに『ヤクザ』の隠語というわけだ。ゲンさんは以前、持ちネタのように自分のことをこう言っていた。

『――俺は昔、足しても18か19の半端モンやったからな!でも今は20や。ヤクザちゃうで。10と4と6で、トーシローの20や!』

ゲンさんの人柄を知らなければ笑うに笑えないギャグだろう。だが今回の堀口の話における『足して20』が、まさかトーシローの20なワケがない。私はゲンさんの方に向き直って、話の続きを催促した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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