六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編15】25000枚相当

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「そんなわけないでしょう!」

私は思わず語気を荒げてしまった。B卓のお客さんたちが何事かと一斉にこちらを見る。カウンターの奥にいた店長も、顔だけをヒョコっと出してこちらを伺っている。

「長崎さん、どうしたの〜?」

バイの秋ちゃんが甘えたような口調で尋ねる。

「いや、なんでもないです。すみません」

私は右の頬を掻きながら少し頭を下げ、平謝りした。店長は真一文字に結んだ口の前で人差し指を立て、カウンターの奥へと消えていった。ゲンさんと顔を見合わせると、ゲンさんも同じように口の前で人差し指を立ててから、さっきよりも小さな声で話を続けた。

「『そんなわけない』って正吾ちゃん、堀口の女、知っとんの?」

私は千夏さんの顔が脳裏をかすめた。だが、あの千夏さんがそんなアコギな真似をするとはどうしても思えなかった。

「いや……知らないですけど」

「そうか。まぁ、あくまでも俺の『読み』やけどな。ただ、麻雀と一緒で、俺の『読み』は鋭いで!」

そう言ってゲンさんはクックックと小さな声でと笑った。確かに麻雀におけるゲンさんの読みは鋭い。何度その正確な読みに驚かされたことか。

「ほいでな、金貸してくれ言われたわ」

「堀口にですか!?」

「そうや。他におらんやろ」

「い、いくらですか?」

私がそう尋ねると、ゲンさんは手相がハッキリ見えるくらい大きく手を広げて、5本の指を立てた。

「ゴ……?」

「50万やて」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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