六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編19】スティーヴン・セガール 暗黙の了解

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ゲームを始めてしばらくすると、私の背後でドアが開く音が聞こえた。

「おぉ!社長、お疲れ様です!お連れ様もご一緒で。今日は早いですね」

店長の張りのある声が店内に響き渡った。この『ライズ』の社長が、麻雀仲間を連れて来店したのだ。社長は、店の状況を確認がてら、こうして週に三回ほど『ライズ』に顔を出す。といっても、根っからの麻雀好きである社長の目的は、もちろん麻雀を打つことだ。

「社長!もちろん打っていかれますよね?お連れ様も?」

店長がそう聞くと、社長は満面の笑みで大きく頷いた。それを確認した私と堀口は、すぐに卓の状況を報告した。

「え~東3局、長崎の方は28900点持ち、親番二回、すぐ交代できます!」
「堀口の方も大丈夫ッス!33000点持ち、親番一回でよければ入れまス!」

社長は、お連れの方に好きな方を選ぶように促した。すると、お連れ様が私の方を選び、社長が堀口と交代することになった。社長は卓に入れば客という扱いなので、これで「マル」になった。

「それでは皆様、トップ目指して頑張ってくださ~い!」

「頑張ってください~ッス!」

私は久しぶりに堀口の元気な声を聞き、少し嬉しくなった。

私と堀口は、使っていたコップとおしぼりを持ってカウンターへ行くと、店長が体を傾けてささやいた。

「社長がいる間は……ね。よろしく頼むよ」

「了解です」

これは、社長がいる間は立って待機しなさいということだ。これは『ライズ』の中では暗黙の了解であり、従業員は皆心得ていた。まぁ社長がいないときは椅子に座って喋っていても構わないという自由な風土を謳歌しているのだから、少しくらいは我慢しなければ。

店長がカウンターの奥へと引っ込むと、堀口がおずおずと近づいてきた。

「長崎さん、ちょっといいッスか……」

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  • 麻雀卓に置かれるプレート。東場、または東幹久であることを示す。麻雀卓に置かれるプレート。東場、または東幹久であることを示す。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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