六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編21】薄給MEN

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「貯金!?まぁ、あるか無いかと言われたら……無いよね」

堀口の真意をすでに知っていた私は、自嘲気味に笑いながらそう伝えた。

「そうッスよね……」

他人に貯金額を聞いておいてその言葉はあんまりじゃないか。一瞬だけそう思ったが、ふと隣にいる堀口の顔を覗きこむと、先程まで麻雀を打っていた時とは違い、眉尻が下がり、口をへの字に曲げ、ただならぬ悲壮感が漂っていた。同僚のそんな顔を見てしまうと、なんとか力になってやりたいとは思うのだが……

「なんで?金無いの?こないだ給料日だったじゃん」

「そうなんスけど……」

「まぁウチの給料なんてたかが知れてるけどさ」

私が『ライズ』の薄給を嘆くと、堀口もそれに同調して少しだけ口角を上げた。ただ、このままでは話が先に進みそうもないと感じた私は、あえて千夏さんの名前を出して、半歩だけ踏み込んでみることにした。

「スロットもちょっとは勝ったんでしょ?千夏さんと一緒に?」

堀口は『千夏さん』の名前を聞くと、ピクリと眉が動いた。だが、次の瞬間には、いつもの真一文字の眉へとスッと戻り、まるで感情を奪われたかのように無表情になってしまった。

やはり千夏さんとの間で何かあったのだろうか。

それからしばらく、二人の間に沈黙が流れた。B卓では社長が親の連チャンを続けている。こうなると社長は本当に強い。やはり会社を興すような人物は強い運も持ち合わせているのだろうか。

いい加減、この沈黙に耐えかねた私は、カウンターのブックスタンド立てられた、昨日の日報が挟まれたバインダーを手に取った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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