六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編22】日報テイオー

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日報には、その日の勤怠や売上などが記載されていた。『ライズ』は遵法営業をモットーにしているわりには――と言っては語弊があるが――近隣の雀荘よりも頭ひとつ抜けて売上が良いらしい。時々、社長が自分の財布代わりにレジから数万円を拝借していく事を除けば、いたって健全経営だと言える。

――ふ~ん、昨日もなんだかんだで結構な売上になってるな

特に何かを見たかったわけでもないので、サラリと一瞥して元の場所に戻そうとした時、一枚の紙が目に止まった。それは、私達が『ライズ』のアルバイトの面接に来た時に提出した履歴書だった。一番手前にあったのは、その写真からひと目で分かる、堀口のものだった。

「堀口、これ見て」

私は笑いをこらえながら、その履歴書を手渡した。

「なんスかこれ?どこにあったんスか?」

「日報の奥。堀口、めちゃくちゃ笑ってるじゃん、この写真」

履歴書に貼られた堀口の証明写真は、目を大きく見開き、白い前歯が覗くほどに口を横に広げ、上目遣いでこちらを見つめていた。その顔はまるで、見事なジャグリングを決めても眼の奥が笑っていない「ピエロ」のようだった。

堀口は自分の写真を見ると「フフッ」と軽く鼻で笑った。いつもの堀口ならばもう少し乗ってきてくれるはずだが、今日はやはりそれどころではないのだろう。

それでも、堀口の妙な証明写真のおかげで少しだけ空気が軽くなった気がした。私は、履歴書を元の場所に仕舞ってから、先程の話の続きを尋ねた。

「ところで、さっきの話だけど。いくらくらい必要なの?俺は無理かもしれないけど、金額次第じゃ友達に相談してみてもいいよ」

本当は金の都合をつけられるような友達などいなかった。その言葉を聞いた堀口は、しばらく下唇を噛んで考えた後、ゆっくりと話し始めた。

「そうッスね……できれば……50万……くらいは欲しいんスけどね……」

「50万!?」

私は周りに聞こえないように小さな声で、大げさに驚いてみせた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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